たいていの職業では、職務経験が重視されます。転職する場合など、その職種に関する経験と知識がなければ、非常に不利になってしまいます。しかし警備員は違います。警備員は、未経験者でも問題なく目指せる職業の1つなのです。
ここでは、警備員が未経験者でも歓迎している理由と、未経験者が警備の仕事をする場合に注意したい点について説明していきます。
未経験でも警備員になれる?
他の仕事と違い、警備業界では「未経験者歓迎」で求人を出しているところが多くあります。そのため警備員は、未経験者でもなりやすい職業の一つとなっています。
警備業界が未経験者を歓迎しているのには、「新任教育」「仕事の多さ」「定着率の低さ」の3つの理由が考えられます。
新任教育
警備員は、お客様の安全と財産を守る重要な役目を担っています。そのため、警備員になるためには「必ず研修を受けなければいけない」と警備業法という法令により定められています。この研修は、正社員だけではなく短期のバイトであっても例外なく受けなくてはいけません。
研修時間は30時間で、警備業務の基本や警備に関わる法令を学ぶ「基本教育」と、施設での監視や巡回方法や、工事現場などでの人や車両の誘導方法を学ぶ「業務別教育」に分かれています。
基本教育でも業務別教育でも、DVDの映像を見る「座学」と実際に体を動かす「実技」の両方があります。このように警備員は、法律により十分な教育を施すことが義務付けられているために、未経験者でも問題なく働くことができるのです。
ちなみに、新任教育も仕事とみなされるため、ちゃんと給料が出ます。ただし出される金額はさまざまで、最低賃金分しか払わない会社もあります。警備員のバイトをしたい場合は、新任教育時の賃金も気にしておいた方が良いでしょう。
仕事の多さ
日本では、一定以上の規模の施設では警備業務がおこなわれています。その数は膨大で、しかも建物がある限り永続的に必要になる仕事です。さらに建築工事や道路工事をする時にも警備員は必要不可欠です。
他にイベント時の警備や、銀行などからの現金輸送警備もあり、警備の仕事が尽きることはありません。じっさいに平成28年度の調査では、「54万3244人」の警備員がいて、その総売上高は「3兆5000億円近く」となっています。
(参考:平成28年における警備業の概況)
このように警備員は非常に仕事が多い職業ですので、経験未経験を問わずに求人が出されているわけです。
また、2020年には東京オリンピックが開催され、それに関わる工事も本格化しています。これに伴い、警備員も多く必要になります。もちろんオリンピック本番では、会場警備にも多数の警備員が必要になります。そのため現在は、警備員の需要が高く、警備員になりやすい環境だと言えるでしょう。
定着率の低さ
警備員という仕事は定着率がとても低く、わずか4割ほどとも言われています。つまり離職率が非常に高く、慢性的な人員不足に陥っている業界だと言えるわけです。そのため、会社側も経験者募集などと贅沢なことは言っていられないのです。
定着率が低い原因はいろいろあります。たとえば施設警備では、業務にかかわる肉体的負担自体は低めですが、勤務時間が長くなりがちです。24時間勤務などということも普通にあり、長時間拘束による負担は、肉体にも精神にも大きなダメージを与えます。
さらに、長時間勤務の場合には休憩時間がありますが、勤務場所と休憩場所が同じであることが珍しくありません。そうなると、会社の同僚と24時間顔を突き合わせていないといけないわけです。気の合う人なら問題ありませんが、性格的に合わなければ、こうした人間関係も非常に大きな負担になってしまいます。
工事現場やイベントでの誘導警備の場合は、施設警備ほど長時間拘束されることはありません。しかし屋外での作業が多く、肉体的負担が大きくなります。さらに仕事場所も固定されず、日によっては遠出しなければいけないこともあります。
他に、目的の仕事につくまでのつなぎとして警備員になる人もいます。そのような人は、就職先が見つかれば警備員をやめてしまいます。
以上のような理由から離職率が高い仕事ですので、警備会社は未経験者でも積極的に雇用しているのです。
未経験者が警備員のバイトをする場合の注意点
未経験者可で募集している警備員のバイトは、たくさんあります。地域ごとに多数の求人があるので、バイト先が見つからないということはめったにないでしょう。つまり、バイトする側がある程度バイト先を選ぶことができるというわけです。
ただし未経験者の場合、「面接」と「新任教育」「人間関係」について注意してほしいことがあります。
警備員バイトと面接
上記のように警備員は離職率が高く仕事量が多い業界ですので、面接でもそれほど厳しいことは言われないはずです。ただし警備員は、学校やオフィスなど人目につく場所で働くことが多い仕事です。そのため、身だしなみにはある程度気をつける必要があるでしょう。
派手なヘアスタイルやネイル、ピアスなどをしていると、雇用を断られてしまうこともありえます。面接に行く時には、常識的な髪型や服装を心がけましょう。
また、面接時に提出する履歴書の書き方も注意しましょう。基本的なルールや書き方を理解していないとそれだけで不採用になることもあります。履歴書の正しい書き方は、警備員(正社員・アルバイト)になるための履歴書作成マニュアルの記事を参考にしてみてください。
警備員バイトと新任教育
未経験で警備員をやる場合、新任教育に注意しなければいけません。簡単にDVDだけを見せて「あとは現場で詳しく教えてもらって」と言うような会社は避けるべきです。新任教育を適当に済ませている会社も中にはありますが、これは法律違反です。
ちゃんと30時間の新任教育を施さないような会社なら、働かないほうが無難です。法律に背くだけではなく、未経験者がしっかりとした教育無しに現場に放り込まれると、非常に困ったことになるからです。
通行者に罵声を浴びせられることもありますし、知識不足から事故の原因を作ってしまうこともありえます。5日程度の日数を取り、しっかりと新任教育をしてくれるような会社で働くようにしましょう。
バイト先がちゃんとした会社だった場合は、未経験でも大きな問題は無いはずです。しっかりとマニュアル化された新任教育がある分、他のバイトよりも仕事に慣れやすいでしょう。
警備員バイトと人間関係
警備員の主な仕事は施設警備と交通誘導です。どちらの場合でも、多数でおこなうことが多く、長時間同僚と過ごすことになります。そのため、警備員のバイトを円滑にこなすには人間関係が非常に重要になってきます。
また、警備員は高齢者の割合がかなり高い職種です。そのため、しっかりと礼儀正しくすることが大切です。年配の方は礼儀作法にうるさい人が多く、もしも関係が悪化すると、バイトをする際に面倒が多くなってしまいます。
未経験者が正社員になりたい場合の注意点
仕事自体は未経験でもとくに問題はありません。警備員のバイトしたことがあれば、より仕事に馴染みやすいというくらいでしょうか。必要な資格なども特に無く、運転免許を持っていれば便利という程度です。
未経験で警備員という仕事につきたい場合、知っておいて欲しいことが3点ほどあります。それは「給料」「労働時間」「転職」についてです。
警備員と給料
正社員として警備員になりたい場合、規模の大きい警備会社に勤めることをすすめます。たとえば、SECOM、綜合警備保障などです。なぜなら警備員を本職にしようと考えた時、賃金の問題が立ちはだかってくるからです。
バイトでやるなら、警備の仕事は悪くありません。他のバイトより給料は高めですし、工事現場の誘導警備などでは、予定よりも早く仕事が終わって実質的な時給が数千円になった、というようなこともありえます。
しかしこれがバイトではなく就職となると、話がまったく変わってきます。多くの警備会社では、いくら働いても昇給も昇任もほとんど無いのです。いくらたっても入社時と給料が変わらず、お金を稼ごうとすれば働く時間を増やすしかありません。
社員でもアルバイトのようなシステムで働いているというのが、警備業界の実態です。残念ながらこれは、売上でトップ100位に入るような警備会社でもありえることです。仕事にふさわしい給料がしっかりと払われているのは、ごく少数の会社でしかないと考えておいたほうが良いでしょう。
警備員として働くには、給料の実態も把握しておくことが大切です。こちらの警備員の給料の真相!安い?高い?始める前に知っておこう!の記事にて警備員の給料や年収を詳しく解説しています。
警備員と労働時間
大手企業でも中小企業でも、警備業界では勤務時間が長いのが普通です。有給休暇を取ろうとしただけで、眉をしかめられる場合も珍しくありません。全般的に仕事が忙しく、休みが取りにくい職種だと覚悟しておくべきです。
逆に、長い時間働きたいという人には向いている職種だとも言えます。働けば働くほど給料は増えますので、体の丈夫さに自信があれば良い職場でしょう。
警備員の労働時間は働く環境や仕事内容によっても異なります。仕事内容については、警備員の仕事内容は業務種別や働く場所で大きく変わるの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
警備員と転職
警備員に転職するのは、そう難しくありません。じっさいに定年退職した人が、異業種から転職するのも一般的です。しかし逆に、警備員からほかの職業に転職するのは、そう簡単ではありません。なぜなら警備というスキルは、警備業界でしか活かせないことがほとんどだからです。
警備員は商品を売ったり、商品説明をしたりしませんので、営業スキルも接客スキルも身につきません。書類作成などもメインの業務ではありませんので、経理などの事務職につくのも困難です。
もちろん、警備会社にも総務課や経理課はありますから、そういう課に配属された場合は話が違います。しかしそうでないなら、転職に役立つスキルは警備会社では身につかないと思っておいてください。
警備会社に入るなら、転職は考えずに、資格を取得して昇任していくことを目指すほうが賢明です。
まとめ 未経験でも警備員になるのは意外と容易
未経験だからといって、警備員になるのを尻込みする必要はありません。バイトであれ、正社員であれ、新任教育でしっかりと業務内容を教えてもらえるので、問題なく働くことが可能です。
むしろ、慢性的な人手不足にある警備業界では、未経験者でも歓迎されることが多いでしょう。ただし、警備業界では人を使い捨てにするようなブラック企業も少なくありませんので、そういった企業にひっかからないよう注意はした方が良いでしょう。
未経験で警備員の仕事をするのに不安になる方も多いです。こちらの警備員の求人に応募する前に覚えておきたい基礎知識まとめ!から警備員がどんなことをするのか、給料はいくらなのかなど様々な疑問やおすすめの警備会社について詳しく解説しているので役立ててください。